面接でよく見せようとする会社が、3ヶ月後に自分でミスマッチ離職を作っている

せっかく採用したのに、3ヶ月もたたずに辞めてしまった。エン・ジャパンの早期離職に関する調査でも、離職理由として最も多く挙げられているのは「仕事内容のミスマッチ」で、全体の57%を占める。つまり早期離職の多くは、入社前に思い描いていた仕事や職場と、実際の現場との”ギャップ”が引き金になっている。だが「ミスマッチだった」というだけでは、具体的に何が違ったのかが見えてこない。残業の多さなのか、人間関係なのか、仕事の難易度なのか。理由が曖昧なままだと、採用コストをかけ、面接を丁寧にやった側の会社も、どこを改善すればいいのかが分からなくなる。だが実際には、改善すべき場所は決まって面接そのものにある。面接で「うちはこんなにいい会社です」を頑張れば頑張るほど、3ヶ月後のミスマッチ離職を自分で作っている。この逆説に気づかないまま、採用コストを毎年かけ続けている会社が多い。
POINT 01面接を「PRの場」にしすぎると何が起きるか
採用に困っている会社ほど、面接を「選考の場」であると同時に「売り込みの場」として使う傾向がある。残業が多い月があっても触れない。体制がまだ整っていない部分は話さない。「アットホームな職場です」とだけ言って、具体的な仕事の実態は出さない。候補者が来てくれるかどうか不安だから、とにかく良い面を前に出す。気持ちはわかる。だが採用を営業に置き換えて考えると、これは押し売りというより、実態を偽って売っているのに近い構造だ。偽って売れば、後で必ずクレームになる。採用でも同じだ。入社後に「聞いてなかった」が出た時点で、そのミスマッチは面接の段階で作られていた。
問題は、良い面だけを見せる面接が、短期的には成功して見えることだ。候補者は好印象を持って入社を決める。だが実際の職場に立った瞬間、面接で聞いていた話と目の前の現実にズレが生まれる。人は、最初から知っていたことより、期待を裏切られたことのほうを強く不満に感じやすい。だからこそ、誠実に伝えていれば受け止められたはずの残業や課題が、隠したことでかえって「信頼できない会社」という評価に変わってしまう。
人手不足が続く中、「他社に決められたくない」という焦りから、つい良い面を強調したくなる会社は多い。だが候補者は複数社を比較検討している。仮に他社より見栄えの良い言葉で口説けたとしても、入社後の実態が伴わなければ、比較対象はすぐに「辞めた前の会社」に変わるだけだ。

このミスマッチが生む負担は、辞めた本人だけの問題では終わらない。求人媒体への再出稿費用、面接にかけた時間、教育に投じたコストがすべて無駄になり、残ったメンバーは欠員分の業務をカバーしなければならない。採用担当者にとっては「また一から探し直し」であり、現場にとっては「また新しい人が辞めた」という疲労感が積み重なる。面接で無理に良く見せようとした分だけ、この負担はあとから重くのしかかってくる。面接で見栄えのいい言葉を並べるコストと、辞められたあとに同じ採用活動をもう一度繰り返すコストを比べれば、後者のほうが圧倒的に大きい。
POINT 02正直に話すほど、「本当に合う人」が残る
「正直に言ったら来てくれなくなるんじゃないか」という不安をよく聞く。だが考えてほしいのは、正直に伝えて来なくなった人は、入社しても早く辞める確率が高い人だということだ。入社前に自己選択してもらうほうが、会社にとっても候補者にとっても誠実だ。
組織心理学ではこれを「RJP(Realistic Job Preview/現実的な仕事情報の事前開示)」と呼ぶ。提唱したのは1973年、アメリカの産業心理学者ジョン・ワナウス(John Wanous)である。仕事の厳しい面や課題もあえて含めて伝え、入社前に候補者自身に「それでも自分に合うか」を判断してもらう考え方で、良い面だけを伝えるより手間はかかるが、結果的に入社後の早期離職を防ぐ効果があるとされている。
具体的に、面接での言葉をどう変えるか。NG例とOK例で見る。
- 繁忙期の話(NG):「残業はほとんどありません」
繁忙期の話(OK):「3月と9月は忙しくなりやすく、夜遅くなることもあります。それ以外は基本定時を守っています」
- 職場の課題(NG):「職場の課題は特にないです。みんな仲がいい職場です」
職場の課題(OK):「マニュアルがまだ整備できていない部分があります。一緒に作っていく感覚を持てる方に来てもらいたいと思っています」
- 仕事の難しさ(NG):「慣れれば誰でもできる仕事です」
仕事の難しさ(OK):「最初の2〜3ヶ月は覚えることが多くて大変です。だからこそ定着した人には安定した環境を用意しています」

NG例はどれも嘘ではない。だが「実態を伝えていない」という点で、入社後に「違った」を生む種になる。OK例は不安を煽っているのではなく、実態を伝えた上で「それでも来たいか」を相手に判断させている。相手に自発的に「入りたい」と思わせることが、採用を長続きさせる唯一の方法だ。この一手間を惜しんだ結果が、POINT01で見たような再採用のコストとなって返ってくる。正直さは、短期的には遠回りに見えて、実は最も費用対効果の高い採用活動だ。
まとめ:面接を「相互理解の場」に変える
採用で大切なのは、来てもらうことではなく、「それでも来たい」と言ってもらうことだ。正直に職場の実態を伝えると、合わないと感じた人は来なくなる。一見、応募数が減るように見える。だが残った人は、実態を知った上で選んでいる。だから「聞いていなかった」は起きない。面接を「いい会社を売り込む場」から「お互いが判断する場」に変えること。それだけで、3ヶ月後の退職届は確実に減る。面接を採用担当者だけの仕事だと捉えず、現場の実態を最もよく知る社員の声を反映させることも欠かせない。誰か一人が良く見せようとしなくても、複数の視点で実態を伝えられる体制を作っておくことが、遠回りに見えて一番の近道になる。面接で正直に話すことは、応募数を減らす行為ではなく、採用のやり直しという最も高くつくコストを避けるための投資だと捉えたい。





























